SIMロック解除のガイドラインについて総務省に物申したい。

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 一昨年末、総務省より公表された「SIMロック解除に関するガイドライン」。これは、2015年5月以降にキャリアが新たに販売したすべての端末は、SIMロック解除に応じなければならないという旨である。SIMロック解除とは、特定のキャリアしか利用できないように端末にかけている制限を解除することだ。

 多くの端末をキャリアから購入している私にとってはたいへん喜ばしいことだが、このガイドラインに関して少々物申したい。

ガイドラインの残念なところ

 残念なことに、SIMロック解除が義務化された端末は、2015年5月以降に購入したものだけである。つまり、それ以前に購入した端末はこの改正ガイドラインの適用外であり、SIMロック解除はキャリアの判断に委ねられているということだ。

 このことに関しては、多くの団体や個人から「既存端末(2015年5月以前に発売された端末)もSIMロック解除の対象にすべき」との意見が寄せられており、私も同感である。

 まずは、この意見に対する総務省の考え方をご覧いただきたい。

※以下、「既存端末」と記されている箇所については、2015年5月以前に発売された端末を意味する。

総務省の見解から読み解く

 既存端末については、SIMロックを解除する前提で設計・製造が行われておらず、また、他事業者のサービスの利用に必要な技術基準適合証明等を受けていない場合もある。

 したがって、改正ガイドラインの適用については事業者が十分な対応を行えるよう一定の準備期間を設けるべきであり、既存端末に対してまで改正ガイドラインを適用することは適当ではないと考える。

 なお、既存端末であっても対応可能な端末については、改正前のガイドラインの趣旨に沿い可能な限り、事業者がSIMロック解除に応じることが期待される

 出典:総務省ホームページの別紙4

 総務省の考え方も理解できないものではないが、いささか首をかしげたいところがあるので、私の意見と共に読み解いていきたいと思う。

 まず、”既存端末については、SIMロックを解除する前提で設計・製造が行われておらず” とあるが、全てが全てではない。総務省は次のように述べている。

 近年のLTEスマートフォンの普及といったモバイル通信市場の環境変化によって、事業者間の通信方式や端末の仕様等の共通化が進みつつある。

 出典:総務省ホームページの別紙2

 まさにその通りでもあるが、これは今に始まったことではなく、既に、数年前にもiPhoneやGalaxy、Xperiaなどもとっくに多くのキャリアに対応できている。海外ではこのような端末のSIMロック解除は当然のように行われているほどだ。一応、総務省はこのような端末を ”既存端末であっても対応可能な端末” と言い、解決策を提示している。

 しかし、その解決策の問題点は ”既存端末であっても対応可能な端末” のSIMロック解除の取り扱いが、”事業者がSIMロック解除に応じることが期待される” ということであり、冒頭で述べた通りキャリアの自由な判断によるものなのである。

 ここで私は叫びたくなった。

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 ”期待する” とは全く無責任だ! そもそも、なぜSIMロック解除義務化したのか原点に振り返ってほしい。それは、自主的に認められたSIMロック解除をどこのキャリアも積極的ではなかったからだと。総務省はこのように述べている。

 これまでのところ事業者によるSIMロック解除の取組は限定的である。

 出典:総務省ホームページの別紙2

 であれば、SIMロック解除をしても問題のない端末、またの名を ”既存端末であっても対応可能な端末” を義務化するべきではないのか。せっかくの良い改正ガイドラインが、もうひと押しが足りなく、残念で仕方がない。

 そして、”他事業者のサービスの利用に必要な技術基準適合証明等を受けていない場合もある” とあるが、こういうケースを要因に、”既存端末であっても対応可能な端末” まで巻き込んでSIMロック解除の義務化を対象外にするのはおかしい。むしろ、こういうケースを限定して、SIMロック解除の義務化を対象外にすればよいのではないか。

解約した端末のSIMロック解除の期限は廃止すべき

 キャリア解約後のSIMロック解除の対応は以下のようになっている。

NTTドコモ

 すでにドコモを解約済の方は、解約日から3か月以内であること

 出典:NTTドコモ

au

 特に解約後の期限はなく、購入から180日経過している端末であれば対応が可能(中古も含む)。

ソフトバンク

 解約済み製品のSIMロック解除のお手続き可能期間は、解約後90日以内となります。また、解約済み製品のSIMロック解除のお手続きは、契約されていたご本人さま限り可能です。

 出典:ソフトバンク

 

 既存端末のSIMロック解除を義務化するには、まず解約後の期限を排除しなければならない。私は、そもそも解約後に期限が存在することに疑問を感じている。

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 基本的に多くの端末は、キャリアと2年の契約を結ぶことで低価格での購入が実現できている。そういうこともあり、「SIMロック解除を義務付ける必要ない。」「解約後の期限だってあってあたりまえだ!」という声もある。しかし、それは大きな間違いであると私は考える。

 私は決してSIMロック自体を反対しているわけではないのである。むしろ、現時点でキャリアのSIMロック解除の条件としてある ”購入から180日後” も、730日後(2年後)にしてもよいくらいだ。なぜなら、快適な通信サービスの利用のもと、2年契約で通信料を支払っている代わりに、24回払いの低価格で購入させていただいているからである。

 ただ、解約することによって、SIMロック解除に期限を設けたり、対応しないというのは違う。低価格で購入したのだとしても、キャリアとの契約のもと、きっちりお金を払ってるわけであるのだから、それは正真正銘購入者の所有物である。それをキャリアにいちいち制限をかけられる筋合いはないのである。要するに、支払い完済後の2年後であればいつでもSIMロック解除に対応すべきであると言っているのである。

既存端末のSIMロック解除の義務化はさらなる携帯業界の発展となる

 既存端末のSIMロック解除を義務化すると、今まで眠っていた端末を別キャリアで再利用ができる。そのような端末は、最近話題となっている ”格安SIM” と呼ばれる低価格で通信サービスを提供するMVNOで契約することが可能となる。すると、MVNOはもちろん、大手キャリア(MNO)も負けていられないと、新サービスや新料金を提案したり、競争に走ることでさらなるサービス向上が期待かもしれない。

 確実にそうなるとは言い切れないが、可能性を広げるという意味では価値の無いことではない。

今後に期待して...

 ここまで言ってはなんだが、SIMロック解除はまだまだ発展途上である。SIMロック解除の義務化を実施する一番大きな要因は、利用者に自由を与えるため。改めて冒頭の総務省の見解を抜き出したい。

 改正ガイドラインの適用については事業者が十分な対応を行えるよう一定の準備期間を設けるべきであり、既存端末に対してまで改正ガイドラインを適用することは適当ではないと考える。

 出典:総務省ホームページの別紙4

 これは2015年5月以降に発売された端末のSIMロック解除に備え、当時(2014年12月)からSIMロック解除開始日までに、キャリアが十分な対応を行えるよう一定の準備期間が必要であるということである。だから、既存端末まで扱うのは困難であるわけで、改正ガイドラインを適用するのはやめようということであろう。

 裏を返せば、SIMロック解除にキャリアが十分な対応ができたと見込めれば、既存端末のSIMロック解除も問題がないということだ。近い将来には、ぜひ既存端末もSIMロック解除の義務化対象になっていることを願うばかりである。